事件の概要を知っていたこともあり、なかなか読み進むことのできない本のように予想していたけれど(じっさい、図書館から借りて1週間以上放置していた)、意に反して一気に読みきってしまった。ミスドで遅めの昼食をとりながら読み始めて、打ち合わせの時間が迫っているというのに、「あと1ページだけ、あと1ページだけ」と本を閉じるのが惜しかったくらいだ。
「事実は小説より奇なり」と陳腐な言い回しをするのもはばかられるのだが、下手な小説よりスリリングな読後感だった。裁判の結果はわかっていたいたものの、何をきっかけに原告と被告の形勢が逆転したのかは知らなかっただけに、「うわ! この先どうなるどうなる?」と思いながらページを繰っていった次第である。
この本では、予断先行で必要十分なウラとりもせずスクープ合戦に走るマスコミの報道姿勢に対して穏やかな文体の中にも警鐘を鳴らしているわけだが、だからといって著者の主張には100%コミットできたわけではなかった。
なぜなら、わたし自身が事件の当事者に接触していないことや、紙幅の都合かどうかは分からないが、本書では原告である〈浅川夫妻〉とりわけ妻・和子が虚言を重ねた背景に十分に切り込んでいないからである。わたしが報道に接するときに「報道では……と言っているが本当か?」と常に疑念を抱きつつ構えている、ということも一つの理由なのであるが。
仮にこの本に書かれている、小学校の管理職の〈事なかれ主義〉が事実だとして。
どうしてここまで教師が無力に、そしておよび腰になってしまわなくてはいけないのだろう。自身の仕事に信念を持っているのであれば、保護者からの理不尽な要求に「喧嘩上等!」と切り返すくらいの気概を持ってほしいのに。〈浅川夫妻〉の想像を絶する言動にも驚きの念を禁じ得ないが、それに負けず劣らず〈川上先生〉というスケープゴートを立ててさっさと幕引きを図ろうとする小学校管理職の〈事なかれ主義〉にも反吐が出そうになった。彼らの言動からは、約30年間の教職人生で培った〈教師の信念〉といったものが微塵も感じられなかったのだ。
……と本には書いてあるが本当か?と、またも振り出しに戻るわけだ。