向谷実『鉄道の音』

図書館の新着本コーナーで見かけて即借り出し。/テツ/ && /元フュージョン小僧/ の血が騒がないわけがないではないか、このタイトルと著者の組み合わせ。

……と期待して読みはじめたものの、全190ページのうち、半分以上が資料(京阪とJRのアナウンス・喚呼集、京阪電車発車メロディ解説)という「これで790円はちょっと高くね?」的内容。読みもの部分も前半は幼少の頃のテツにまつわる思い出とか、カシオペアデビュー前夜みたいなエピソードで、わたしとしては「うーん……」という印象だった。

それでも付箋を貼った箇所はあったので、例によって抜き書き。

聴き手に情景を思い描かせるというのは、音楽にとって非常に大事なんです。あまり良くない曲では、音ばかりが伝わってくる。でも良い曲は絵が伝わってくる。ですから、それを助けるタイトルにも非常にこだわります。後で詳しく述べますが、私が発車メロディを作曲したときも、「絵を見せること」を重視しました。
(p.34)

 九州新幹線の発車メロディは、転調を重ねながら上昇してゆく展開です。その終わり方ですが、ここに私のこだわり、セオリーがあります。それは「終わらせない」ということです。完全終止にしない。擬終止にする。
 発車メロディとは、これから電車に乗る人を後押しする曲です。それが完全終止で終わっていたら、これから電車に乗って何かをしに行こうとしている人の出鼻を挫くことになります。電車に乗って、学校へ行く人、仕事に行く人、あるいは家へ帰る人、みんな電車を降りた後のトゥー・ビー・コンティニューがある。鉄道を利用して、その先の何かに向かっている。その人たちに対して「あんた、終わり」みたいな感じで電車に乗せるのは、大変失礼な気がするのです。
(p.79)

 九州新幹線のときのギャラは非常に廉価でした。レコーディングにかかった必要経費ぐらい。ほどんど(ママ)制作原価ぐらいです。
《中略》
私も鉄道の現場の関係者として認知されるのだということのほうがありがたい、という気持ちでした。
(p.82)

 一般電車も、上り下りでのテイストの違いは特急と同様です。ただ、特急の発車メロディが4分の4拍子であるのに対して、一般列車の場合は上り下りともに4分の3拍子にしました。
《中略》
 4拍子は、人を落ち着かせる安定した拍子です。ところが4分の3拍子だと、人は安定するよりも流動する。ズンチャッチャのワルツを思い浮かべていただくと、お分かりになると思います。
(p.91)


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