先日読んだ『農協の大罪』からの横展開というべきか、図書館の新着図書コーナーにあったのでむんずとつかんで直行。山本博史・阿部淳也・舘野廣幸・牧下圭貴・渡邉吉樹の五氏による共著である。
以下、例によって抜き書き。
二〇〇四年度からは、「米政策改革」によって、目標数値が減反する水田面積ではなく、米の生産目標数量で示されるようになりました。全国の需要量を基礎にして、政府のいう『売れる米』だけの数量をつくる方式に変えられています。
(p.8)MA米が義務であるという規定は、WTOの農業規定のどこにも根拠は示されておらず、日本だけがこれを一〇〇%忠実に守ってきたことは、国会の場でも取り上げられてきました。
(p.11)食べものへの残留農薬問題が深刻化するなかで、輸入・国内流通を問わずすべての食品に許される残留農薬の限度基準を明らかにし、これを超える残留値のものは販売を禁止する制度が、「ポジティブリスト制度」として二〇〇六年五月二九日から実施されています。
これまで基準のなかったものの多くに、〇・〇一ppmという一律基準が適用されました。しかし、WTOの食品衛生管理の規制緩和とともに、ここでも輸入依存度の高いものほど緩やかな基準が適用されているのに気づかされます。
(p.27)いま世界では、地球温暖化対策としても、食生活のあり方を見直そうという取り組みが広がっています。
《中略》
そのためには、食糧・農業政策を根本的に見直し、消費者が求めやすい食糧を、生産者の暮らしも成り立つ条件で実現しなければなりません。それには、つぎのような要件が考えられます。
《中略》
・米づくりには中小農家もふくめた地域社会の協働が不可欠であり、その条件を維持すること。
(p.30)
【以上 山本氏】主食用以外の米は、減反面積分と認められるため、「野菜を栽培したり、耕作放棄するよりも、慣れた米を栽培して田んぼを守りたい」と、採算を度外視して加工米栽培を選ぶ生産者もいます。
(p.36)米穀検査は、農産物検査法で定められた任意検査であり、受けなくてもかまいません。
(p.39)米の加工食品は「もち」を除いて原料原産地表示も必要ありません。加工食品業者、外食・中食・米飯業者が、自主的に産地や品種、産年を表示しなければ、米の由来を判断できません。
(p.40)
【以上 牧下氏】「集落営農」政策も、担い手の高齢化などによって、やがて崩壊するでしょう。そして集落営農組織の集積した農地は、おそらく大手資本の株式会社へと渡っていくでしょう。そのとき農家は、株式会社の従業員として、自分の農地を耕すことになるのかもしれません。
(p.44)二〇〇〇年に制定された「有機JAS法」などもふくめると、有機栽培に対する法整備が進みましたが、一方で「有機JAS法」による有機農産物の認証制度などはきわめて「煩雑」で「きびしい」義務を農民に課しています。まるで「有機農業取締法」のような様相です。
片や、慣行農法においては「農薬取締法」なるものがありますが、農薬の使用に関する農家の義務は、なきに等しい状態です。
(p.49)トレーサビリティは消費者にとって生産者がわかりますが、生産者にとっては消費者を知ることができませんから、これは情報の一方通行に過ぎません。
(p.53)
【以上 舘野氏】米の等級検査では着色米を基準の一つにしているため、無農薬栽培や有機栽培による米は、上位等級を獲得することが、ほぼ不可能となっています。農産物は、規格にはめようとすればするほど、人工的、恣意的な工業製品と化します。
(p.58〜59)今後、私たちの蔵では無農薬栽培を拡大していく予定ですが、有機認証は受けず、取引先に現場を見てもらい、栽培履歴の情報を開示して、実態を把握してもらう体制をとります。外部の認証機関や行政の検査体制における人的な無駄や資金・税金の無駄を抜本的になくし、生産・流通・消費の、新たなしくみをつくるべきだと考えているからです。
(p.60)
【以上 渡邉氏】国産の加工用うるち米は、通常、全農(全国農業協同組合連合会)から仕入れることになります。
《中略》
量を自在に交渉することはできませんし、ブレンドされており、産地や品種は明らかにされません。通達を受け、前金を支払った上で、ようやく購入が可能となります。
《中略》
このような国産加工米用の購入方法に比べ、くず米、輸入のミニマムアクセス米や米粉調製品(あらかじめ砂糖やデンプンを混ぜることで、米の比率が低くなり、安い関税で輸入できる米粉)であれば、それらを扱う業者から電話一本で簡単に仕入れられるうえに、延べ払いができます。
(p.64〜65)安全性に充分配慮することは、生産者として当然のことです。「いまは安心・安全が流行だから」と飛びつき、売り文句として大きく掲げる企業は危険です。本気で安全性に取り組んでいればいるほど、安心・安全だなどと、簡単にはいえないものです。
(p.68)
【以上 阿部氏】
蛇足ながらこの本の装幀は副田高行氏。副田氏といえば『AQUOS』などの広告で早くから『丸明オールド』を使っていたアートディレクター。この本で『丸明オールド』が多用されているのも、むべなるかな。