これまた、図書館のティーン向け図書コーナー(先日「ジュニア新書コーナー」と書いた気がするが違ってた)からの一冊。高校のときに地学を選択していたわけでもないのだが、『ちくまプリマー新書』だし、難しいことをかみ砕いて解説してあるのだろうと思い、瞬間的に興味が湧いて借りてきた次第である。
ここで大事なことを一つ。津波が来たら遠くへ逃げてはいけない。出来るだけ高いところへ逃げよう。
(p.22)火山の噴火予知は、このほかにも、火山から出てくるガスや火山灰と呼ばれる細かい粒子の成分を分析したり、物質の示すさまざまな性質の知識を応用して組み立てられている。高校の地学は言うに及ばず、物理・化学・数学などすべての学問が使われているのだ。こうして、よりリアルに地下のマグマの実態を描くことが可能になったのである。
(p.30)もぐり込んだインド大陸は、現在でもユーラシア大陸を押し続けている。一年に五センチメートルの速さで北上しているために、ヒマラヤ山脈はわずかずつ高くなっているのだ。
(p.40)ハワイ島の乗っているプレートは、「太平洋プレート」という巨大なプレートである。これは日本列島へ向けて年間一〇センチメートルほどの速さでじわじわと押し寄せている。
(p.53)酸素は現代の生物にとって、なくてはならないものである。しかし、酸素があると生きてゆけない嫌気性の生物にとっては、大気中の酸素の増加は地球上の最大の「環境汚染」であっただろう。このように見方を変えて理解することも、地学の大切な点である。
(p.74)地球を取り巻いている磁気圏は、太陽風の防御壁となっている。この中で地上の生物が守られているのである。
(p.77)地学を学ぶ上で大切なことを話しておこう。「事実」と「原因」についてである。地学の授業をしていると「なぜですか? どうしてですか?」とよく尋ねられる。しかし、この質問には答えられないことがしばしばある。
地球の現象では、事実としてそこに存在はするが、なぜそのような事件が起きたかについては答えられないことがたくさんある。たとえば、氷河の堆積物が六億年くらい前にあったということは、事実としてははっきりと提示できる。そのときの地球がスノーボール状態であったことも事実である。
しかし、どうしてその現象が起きたかについての理由は、うまく答えられない。こうかもしれない、ああかもしれないと推測することはできるが、確かな証拠と論理がないと、「原因」については確定しない。いわば、科学的に因果関係を突き止めたことにはならないのである。
空想と科学が決定的に違うのはこの一点である。
(p.81)地学の話を続ける前に、ここで「棚上げ法」という本の読み方を紹介しよう。
《中略》
わからない言葉の理解にあまり時間を費やさず、覚えられない情報は無視して、とにかく先へ読み進むのである。そうするうち全体像が浮かび上がり、疑問点がひとりでに氷解するようになる。
(p.85~86)地球上で生命が維持できる要因の一つに、地球の温度がほぼ一定に保たれていることがある。これは、太陽エネルギーを受けていることに由来する。地球の受け取る太陽放射エネルギーと地球から出ていくエネルギーがつり合っているからこそ、生命維持に最適の温度が保たれているのだ。
(p.110~111)深層水の大循環は、驚くなかれ一巡するのに二〇〇〇年ほどの時間をかけて起きている壮大な旅だ。しかし、私たち地球科学者からすれば、さほど珍しい時間スケールではないのだが。
(p.117)夏に猛暑が続いたり冬に大雪が降ったりすると、異常気象といわれることがある。気象は常に変動するものであるが、それを大きく逸れて、統計的に見てもめったに起こらない極端な現象を異常気象という。具体的には、長年気象観測を続けているある場所で、三〇年以上も起きなかった現象が発生したときに、異常気象と考える。
われわれは大雨が降っても寒波が来てもなんでも異常気象にしがちだが、これくらいの変動は、地球上で見られるごく普通の姿なのである。
(p.120~121)惑星は、自分の通り道の近くにある微惑星などを引き寄せて自らの一部とし、きれいに消し去らなければならない。いわば、軌道近くにある宇宙のゴミをきれいに掃き寄せる、とも言えよう。ゴミ集めができるかどうかは、星の大きさによって決まる。大きい星ほど重力の力で強く引き寄せるからだ。
(p.131)月はいつも我々に表側だけを見せている。月の裏側はロケットを飛ばして出かけない限り、地球からは永久に見ることができないのである。その理由は、月の表側は裏側よりも少しだけ重くなっているからだ。
(p.141)宇宙空間には、恒星と恒星のあいだに希薄な星間物質がただよっている。星間物質には、星間ガスと星間塵と呼ばれるものがある。星間ガスは水素やヘリウムなどの気体だ。そして星間塵は岩石のかけらや氷などの非常に細かい粒子、いわばチリである。
宇宙とは何もない真空のような空間と思われがちだが、このような星間物質がわずかだけただよっている。といっても、一センチメートルのサイコロに水素原子が一個あるという程度である。これは、人間が実験室で作り出すことの可能な「真空」状態よりもはるかに希薄で、物質がほとんど存在しない状態なのである。
(p.149)地学は多くの図を使って理解する。図は非常に便利なものであり、私たち科学者や理科が好きな人にとっては、全体のイメージをつかむのに重宝している。
余談だが、もともと理系の人間は面倒くさがりなので、いちいち文章を追って理解するよりも、全体を手っ取り早く、一目瞭然に近い状態で把握したいと思っている。ここで図の出番となるのだ。
一つの図にたくさんの情報が入っていると私たち科学者は嬉しくなる。時間が短縮され、とてもお得な感がある。
(p.151~152)電磁波には、温度によって放出される波の波長が異なるという性質がある。すなわち、波長がわかれば、発生した源の温度が分かるのである。
(p.166)他の教科と違う地学の魅力とは何であろうか? それは、最先端の内容が教えられているということだ。
《中略》
地学の内容は二一世紀に展開中のプルーム・テクトニクスまでが教科書で扱われている。私が授業で話すときも、先週印刷されて論文に書いてある内容を紹介したりする。
《中略》
地学には地震・火山・気象など日常の自然災害に関連する重要な項目が含まれているが、日本の大部分の高校生はこれらを学ぶことなく卒業してしまうのである。地震国・火山国である日本列島に住むには、大変危険なことと考えざるを得ない。
(p.169~170)
仕事柄、エネルギーや環境、医療などのフォーラムに出かけることも多い。クローズドな研究発表ではなく、一般の人たちが参加する(主催者側も一般への広報をもくろんでいる)フォーラムだ。そこで常々感じていたのが「どうしてこの演者は、こんなゴチャゴチャとしたスライドを作るのか」ということであった。
なるほど、そういうことだったのか。151~152ページの記述を読んで理解できた。「一つの図にたくさんの情報が入っていると私たち科学者は嬉しくなる」のか。でも、学会のように話し手と受け手が同じ属性である場ならともかく、一般向けのフォーラムでこういったスライドを作るのはいかがなものだろう。