てっきんの具。

「てっきん」と呼ばれて40年のおっさんが書くブログ

「HD DVD惨敗!」の原因をネーミング面から考えてみた(後編)

ども。鉄王です。

前回のエントリーとの谷間に、東芝から正式発表がありましたね。「HD DVDから完全撤退」と。個人的には、さらに〈選択と集中〉を推し進めて、半導体と原子力関連へと経営資源を集中させるのもいいんジャマイカ?と思ったりもしているんですが。弱電と重電の両極!みたいな感じで。

さて、なんだかしり切れトンボで終わった前編に続いて、もう少し、考察を加えてみたいと思います。

ちなみに前編は、このリンクをクリック。

前回のおさらいになりますが、今回のエントリーでは以下の本を参考図書としています。

  • 木通隆行『ネーミングの極意』(筑摩書房) 『日本語の音相』(小学館)
  • 岩永嘉弘『ネーミングの成功法則』(PHP研究所)

では、『日本語の音相』を参考に、BDとHD DVDを音素(=音の最小単位。子音・母音のそれぞれをいい、たとえば「サ」という拍は「s」と「a」の音素によって構成されている)で分割してみます。

ブルーレイディスク
b・u・r・u・-・r・e・i・d・i・s・u・k・u
エイチディーディーブイディー
e・i・ʧ・i・d・i・-・d・i・-・b・u・i・d・i・-

BDの場合、単に「ブルーレイ」と呼ばれるケースが大半だと思われるので

b・u・r・u・-・r・e・i

という音素で評価することにします。

次に、音素から母音のみ取り出していきます。

BD
u・u・e・i
HD DVD
e・i・i・i・i・u・i・i
BD
i×1 u×2 e×1
HD DVD
i×6 u×1 e×1

使われている母音はどちらも i・u・e ですが、HD DVDでの i の突出ぶりが目立ってますね。

ここで、『ネーミングの成功法則』より、おのおのの母音の性質をピックアップしてみますと……

「い」――鋭い印象です。知的なイメージが強く格調もあります。
「う」――情感豊か。軽味もあり、どの母音よりもやさしさがあります。
「え」――やさしさ。静的。やや鋭さもある。情感豊かです。
(『ネーミングの成功法則』 p.162)

母音の印象でまとめると、BDとHD DVDはこんな感じでしょうか。

  • BD……静と動のバランスが比較的良し。使い手を受け止める懐の深さを想起させる。
  • HD DVD……格調の高さと気高さを感じさせる。周囲とは一線を画す〈キャラ立ち感〉も。

ついでに、子音についても見てみましょう。

BD
b・r・r
HD DVD
ʧ・d・d・b・d
BD
b×1 r×2
HD DVD
b×1 d×3 ʧ×1

再び『ネーミングの成功法則』より、子音の性質を拾ってみます。

 子音は大きく分けると、二つのグループに分かれます。まず、
「f・h・l・p・r・w・y」
これらは、どちらかといえば明るく、広がりのある子音です。

(中略)

さて、一方、
「d・g・j・k・m・n・q・s・t・v・x・z」
などは、鋭く強く男性的です。
(『ネーミングの成功法則』 p.164)

どうでしょう? やや大ざっぱに捉えると

  • BD……明るく広がりのある雰囲気
  • HD DVD……強く男性的な雰囲気

総括します。

ネーミングの観点からみると、HD DVDは「呼びやすさ」「覚えやすさ」という点でBDほど簡明でないことに加え、構成音素の面でも「気高さ」「強さ」「鋭さ」が際立っていて、生活者に広く浸透する要素にやや欠けていたといえます。

ともあれ、次世代DVDのフォーマットが事実上一つに収束していくのは喜ばしいことです。今回の出来事を振り返るに、ソニーとフィリップスが規格化したデジタルオーディオのフォーマット(CD-DA)なんてのは奇跡の産物にしか考えられませんね。よくもまあ、世界中の家電メーカーが追従したものだ、と。

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