てっきんの具。

「てっきん」と呼ばれて40年のおっさんが書くブログ

死刑執行という〈事実の報道〉と、死刑の是非という〈議論の提起〉は切り離して行われるべきではないか

ども。鉄王です。

今日はちょっと毛色の違うこと書きます。精米機のことばっかり書いてるブログじゃないんですよ。

4人の死刑を執行、鳩山法相の就任後4か月で10人

法務省は10日、殺人罪などで死刑が確定した岡下(現姓・秋永)香死刑囚(61)ら4人の刑を同日午前、東京、大阪の両拘置所で執行したと発表した。
今年2月1日に3人の死刑が執行されて以来で、鳩山法相が就任してからの執行は10人に達した。後藤田正晴法相が1993年3月に3年4か月ぶりとなる死刑を執行して以降、執行数は前任の長勢甚遠法相の10人が最多だったが、鳩山法相は昨年12月7日の最初の執行からわずか約4か月でこれに並んだ。
同省によると、未執行の死刑確定者はこの日の執行により、108人から104人になった。
死刑が執行されたのは、岡下死刑囚(東京拘置所)のほか、坂本正人死刑囚(41)(同)、中元勝義死刑囚(64)(大阪拘置所)、中村正春死刑囚(61)(同)。
岡下死刑囚は1989年、保険代理業の男性らと共謀し、東京都杉並区の資産家でアパート経営の遠藤ウメさん(当時82歳)の土地を無断で不動産業者に転売し、小切手や現金計約2億円をだまし取り、遠藤さんを絞殺。共犯の男性も短銃で射殺した。
坂本死刑囚は2002年、前橋市で帰宅途中の女子高生(当時16歳)を無理やり車に乗せて絞殺。両親を脅迫して現金23万円を受け取るなどした。
中元死刑囚は1982年、大阪府和泉市で顔見知りの宝石商の男性(当時70歳)とその妻(同58歳)を刺殺し、現金2万4000円を奪うなどした。
中村死刑囚は89年、滋賀県高島市で勤務先の同僚だった男性(同52歳)を殺害し約1万8500円を奪ったほか、同年、同市で60歳前後の氏名不詳の男性も殺害した。
同省は、鳩山法相の最初の執行以来、氏名と執行場所、犯罪事実の概要を公表しており、今回もこれを踏襲した。
鳩山法相は10日、法務省内で記者会見し、「法の要請に基づいて粛々と執行した。(執行の)数は意識していない」と述べた。

(2008.4.10 13:47付 読売新聞)

……という報道を機に、またぞろ死刑廃止派がこぞって抗議声明を出してますが、刑事訴訟法475条に

  1. 死刑の執行は、法務大臣の命令による。
  2. 前項の命令は、判決確定の日から6箇月以内にこれをしなければならない。但し、上訴権回復若しくは再審の請求、非常上告又は恩赦の出願若しくは申出がされその手続が終了するまでの期間及び共同被告人であつた者に対する判決が確定するまでの期間は、これをその期間に算入しない。

とある以上、鳩山法相が「法の要請に基づいて粛々と執行」するのは、きわめて正常なスタンスなんではないでしょうか。執行した事実や執行対象者の氏名をオープンにしているということについても、死刑制度に関する情報開示という点で僕は評価してますし。

少なくとも、「死刑執行に値する条件」が整っている死刑囚(=刑事訴訟法475条の2を満たさない確定死刑囚)に対して執行命令を出してこなかった過去の法相よりも、はるかにキモがすわってると思います。

だいたい、死刑執行の事実が報道されないと、自身の意見をアピールできない廃止派って何? マスコミに尋ねられたから答える、意見する、みたいな。ここでも申請主義? 社保庁でもあるまいし。自身の主張に自信があるなら、もっと、日ごろからその主張を各所で展開していくべきでしょう。

たとえば、森達也氏の『死刑』という本にある、亀井静香氏のコメント

死刑はいくら国家がやるにしても、生きているものの命を奪うことに違いはない。人を殺しちゃいけませんという法律を作るその国家が人を殺すのなら、これは明らかな矛盾です
(森達也『死刑』 p.135~136)

なんてのはすごく納得がいくし、もっと広く伝播されるべき主張だと思うんだけど、悲しいかな、死刑執行の事実が報道された後での〈後出しジャンケン〉としか映らないんですよね。

そもそも、死刑執行の事実をフックにしないと死刑の是非を提起できない〈メディアのぬるさ〉ひいては〈民度のぬるさ〉に原因があるといえるのですが。メディアも「社会の木鐸」なんて錦の御旗を掲げてるつもりなら、そんなフックの有無にかかわらず、死刑の是非について恒常的に問題提起していかないといかんのではないかと、こう思うわけであります。

ちなみに、4月11日付大手紙朝刊の社説は、見事にこの話スルーでしたね。

  • 朝日……「一般財源化―首相は法案修正で確約を」「少年調書引用―講談社の脇の甘さの罪」
  • 讀賣……「講談社報告 厳しく批判された調書引用」「韓国総選挙 どう進める?対「北」政策転換」
  • 毎日……「少年調書出版 取材源守り抜く決意新たに」「経済力強化 地域と雇用の再生が課題だ」
  • 産経……「年金機構人員計画 問題職員の移行は許すな」「北京聖火リレー 名ばかり同然「調和の旅」」
  • 日経……「チベットの人権守り 聖火を揺らすな」「李政権 過半数でEPA推進を」

まあ、メディアにとっても〈その程度の事象〉でしかないわけです。

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